く〜るな幽霊2

536 名前:見習いく〜る幽霊 :2006/05/16(火) 02:46:33 ID:ylV1PEEl0
「うぐぅ…気持ちが悪いよぉ。 風邪でも引いたかなぁ…」
 なぜだか最近、体の調子が悪くなってきた。
 あんまり、幽霊に驚かない馬鹿と同居してるからかなぁ…
 体調を崩して、風邪でもひいたのかも知れない。
 これじゃ、幽霊としての自分が情けないよ。
 …あ、そこのキミ、何で幽霊が風邪をひくんだ、とか思ったでしょ。
 昔からよく言うじゃない、病は気からって。
 だから、気合いのある幽霊だって風邪ぐらいひくんだよ
「へっくち」
 ……とはいえ、こんなあたしの姿、アイツに見られたら笑われるんだろうなぁ…
 アイツ―――そう、名前も知らないこの部屋の住居人だ。
 転入し、私が驚かせようと思った直後にアイツは言った。
『変な幽霊』
 …むぅ、すっごいムカツク!
 巷じゃ く〜る な幽霊で通ってる(はずの)あたしだって、流石に頭に来たね。
 よりにもよって変な幽霊―――
「へっくし、へくちょんっ!」
 ……あ〜駄目だ、力説してる場合じゃないや。
 うん、寝よう。 風邪をひいた時にはそれが一番だ。
 布団を敷いて…って、しけないし…
 仕方ない、このまま寝ようかねぇ…風邪が治るといいけど…

537 名前:見習いく〜る幽霊 :2006/05/16(火) 02:48:04 ID:ylV1PEEl0
「で、おまえさんは何で、人の部屋のど真ん中で堂々寝てるんだ」
「へにゃ…?」
 寝ぼけ眼、開口一番にそう言う言葉が響いた。
 言ったのは、この部屋の住居人……
 ―――しまった! 寝てるところジロジロ視姦されてた!
「なぁに今更慌ててるんだよ、どうどうすぴょすぴょねやがって。
 おかげで、俺も一瞬驚いたぐらい何だからな」
「う……うるさぁい。 体調が悪いんだからしょうがないじゃない!」
「体調が優れない…?」
 あたしの言葉を聞いて、ソイツは一瞬考え、一言
「幽霊…だろ?」
 と。 で、顔がゆるんでいくんだ、ソイツ。
 絶対笑われる。 ムカツク。
 ……と、思って、先の行動を予測していたんだけど、ちょっと違う展開になった。
「幽霊でも体調とか在るんだな…ちょっと待ってろ」
 そういって、台所の方へ引っ込んでいった。
 ……? なんだろ、いつもと違う反応。

538 名前:見習いく〜る幽霊 :2006/05/16(火) 02:49:57 ID:ylV1PEEl0
「ほらよ」
 暫く待って、ソイツは鍋を持ってきた。 その中からはいい匂いがする。
「ナニコレ?」
「卵雑炊、体調が悪い時にはこ〜ゆ〜食べ物が効果的なんだぜ」
 ………
 えと。
 なぜだかよく分からない。 けど、料理を作ってきたみたい
「食べるの? 誰が?」
「おまえが」
 ………
 思考停止状態? ちょっと待って、コイツ何言ってるの?
「なんで?」
「体調が悪そうだから」
 ………
 つまり、こいつは『あたしのために、卵雑炊を作った』わけで
 ………
 えぇぇぇぇ!? ちょ、まっ!
「あ!? あうぅ!? はう!?」
 あたしなんか、うまく言葉がでなくなってた。
 だってちょっと待ってよ。
 こいつにとっては、あたしは怖ぁい幽霊なはず! 言っちゃえば、そんなに好かれることも…その、ないはず。
 なんだけど!?
 それに、今まであたしなんか、散々こいつにからかわれたりもして!
 その、お世辞にも仲がいいなんて事はないのに。
 こいつ、あたしのために?

539 名前:見習いく〜る幽霊 :2006/05/16(火) 02:52:41 ID:ylV1PEEl0
「嘘……?」
 風邪をひいてからなのか、あたしの灰色の脳細胞もパニック状態だ。
「嘘なんかじゃねぇよ。 なんつうか、体調を崩した奴を放っておくなんて俺には出来ないしよ」
 そういって、中身をすくった匙を差し出してきて一言。
「あ……」
 卵雑炊を乗せた匙は、あたしの躰を貫通した。
 考えてみれば、あたしの躰は気合いを入れなきゃ、物に触れることも出来ない。
 んで、今の体調からそんなのはほぼ不可能状態になってる。
 そんなあたしを見て、ソイツは一言言った。
「あ〜、やっぱり駄目かぁ。 しかしコレを捨てるのももったいないなぁ。
 ああ、残念残念。 自分で食べるとするかぁ」
 ………
 あろうことかあろうことかー。
 『あたしの為に作った卵雑炊』は、作った本人があたしの目の前で食べていった。
「むっかぁ〜! な、なによそれ!」
「だって、しょうがないじゃなぁい♪」
 歌いながら、どんどん食べていくそいつ。
 くぅ! 乙女幽霊心を弄んで…!
 この恨みは絶対いつか晴らす! 晴らすったら晴らすんだ!

「…けど、ホント残念だよ」
「へ…?」
 何か言った気がしたけど、ま、いっか