彼女の懺悔3

482 名前:380 :2006/05/11(木) 02:46:23 ID:PGMRXQ6K0
此処は一体・・・何処なんだ?
いつもの苦しさを感じない不思議な幕開け。

気が付くとそこは見慣れない場所だった
いつもと違う始まり。
混乱したが周りを見回して、何とかそこが病室だと理解した。
「良かった。気が付いたんですね。今先生を呼んできますから」
見たことの無い女が何か騒いでいる。
医者から話を聞いたところ、俺は1年近く意識が無かったらしい。
だが、それ以外は何も教えてもらえなかった。
「彼女はっ・・・巻き込まれた彼女は無事なんですかっ?」
「それは、おいおい・・・回復してからお教えします。
 まずは自分のことを優先してください。」

しばらくして、何とか車椅子で動けるようになった頃、担当医から
「会ってみますか?」
突然訊かれた。最初は何の事か分からなかった。だがすぐに
「会えるんですか?彼女に」
「会うだけ・・・でしたらね。」
連れて行かれたのは違う棟の病室だった。
そこで彼女は静かに眠っていた・・・
「貴方と同じで、意識が戻らないんですよ。」
「そう・・・ですか。」

彼女もまた俺と同じように生きていた。

483 名前:380 :2006/05/11(木) 02:48:36 ID:PGMRXQ6K0
それだけで嬉しかった。
今度は俺が待つ番だ。
いいさ待つぐらい、いくらでも我慢できる。
「なぁ、俺もうそっちに行けないよ・・・」
「・・・・・・」
「お前もこうやってずっと待ってたのか?」
「・・・・・・」
「辛いよなただ待ってるってゆうのは・・・」
「・・・・・・」
「早くこっちに来いよ・・・両想い・・・なんだろ・・・」
「・・・・・・」
「お前の声・・・聞きたいよ・・・」
静かに眠ったままの彼女。
毎日、時間の許す限り彼女の傍で声を掛け続ける。
いまだに返事は貰えない。

484 名前:380 :2006/05/11(木) 02:49:41 ID:PGMRXQ6K0
辛いリハビリをこなし、何とか自分の足で歩けるようになった。
「俺、もう自分で歩ける様になったよ」
「・・・・・・」
「いい加減起きてくれよ・・・」
「・・・・・・」
「お前の声、聞きたいよ・・・」
「・・・・・・」
「俺の事忘れてても良いから・・・
 嫌いになってても良いから・・・
 目を・・・覚ましてくれよ・・・」
ピクッ
「えっ?動・・・いた?」
彼女の瞼が震えたような気がした。
そして零れ落ちる涙。
「泣いて・・・いるの?
 そんなに辛いのか?」
「・・・・・・」
返事は無い・・・だが、彼女の目が・・・開いていく
「俺が・・・見えるか?
 声が聞こえるか?
 誰か解るか?」
「ん・・・ん?」
「良かった・・・良かった・・・」
「あ・・・れ・・・?」
「ごめんな・・・ごめんな・・・良かった・・・」
馬鹿みたいに同じ事しか言えない

485 名前:380 :2006/05/11(木) 02:51:45 ID:PGMRXQ6K0
その内、涙があふれて嗚咽しか出なくなった。
「ば・・・かぁ・・・」
「うん。ごめんな。」
「寂し・・・かった・・・よぉ」
「うん。俺も・・・」
「何で・・・泣いてる・・・のよぉ」
「泣いてなんか・・・ないぞっ」
無理やり笑顔を作ってみる・・・が、無理だった。
「悪い、嬉しくても笑えないや」
「ふふっ・・・変な・・・顔」
「やっと・・・笑った・・・」
久しぶりに見る彼女の笑顔。
まだぎこちないがやっと見れた。
それだけで、全てが報われた気がした。

どうして生きていたのか・・・
あそこがどういった場所なのか・・・
今となってはどうでも良い。
これでやっと新しい物語が始まるのだ・・・

486 名前:380 :2006/05/11(木) 02:52:34 ID:PGMRXQ6K0
その後
「ちょっと!早くしてよっ」
「ま、待て・・・心の準備が・・・」
「な、何よっただのマッサージでしょっ。
 早くしてくれないと・・・私も・・・緊張してボソボソ」
「分かった。分かりました。今すぐやります」
「へ変な所・・・触らないでね」
リハビリ後のいつものやり取り。
もうすぐ彼女も退院できる。
「なあ、退院したら何処行きたい?」
「海が良いなぁ・・・別に・・・貴方と一緒なら・・・何処ボソボソ」
「うんいいねぇ海。ん、顔、赤い?」
「水着は・・・ダメ・・・よ」
「なっ!」