右那と左那

450 名前: :2006/05/10(水) 21:58:23 ID:iGQYjvVy0
……何故あんな丈の短い着物を着てるのかしら、右那?
……知らないわよ。そこら中、皆持っているあの小箱、何、左那?
『携帯でんわ』、ね。小箱に語りかけるだなんて……解らないわね、右那?
世の中解らない事ばかりが増えていくわ、左那?
そうね……
そうよ……

……左那?私、退屈だわ……
……私もよ、右那?我慢なさい

……
……
…………
…………

…………っ。右那?あれっ……!
なぁに、左那?…………!

珍しい男……。ね、右那?……ふふっ
ええ。でもやっと落ち着けるわ。ね、左那?……ふふふっ

451 名前: :2006/05/10(水) 21:59:27 ID:iGQYjvVy0
右那、思った通り、ね?
本当ね、左那。この男、背中に“空き”が二つも。

「あれ、身体が……重い……?気のせい……?」

ふふっ、不思議そう……すぐ慣れるわ。それに、“空き”を二つ持っている方が不思議。ねぇ、右那?
ふふふっ、そう。おかげで、離れられない私達が一遍に憑くことができたわ、左那。


453 名前: :2006/05/10(水) 22:00:11 ID:iGQYjvVy0
この男、居心地が良いわ……。ね、右那?
本当。この男、弱々しい気がしたけど……大したもんね、左那。


454 名前: :2006/05/10(水) 22:00:58 ID:iGQYjvVy0
男が勉強しているわ、右那?
男だって学問の一つや二つ修めていないことにはね。価値がないものね、左那?
邪魔をしたくなるわ。ふふっ……あははっ、急に筆が折れたものだから呆然としているわ、右那?
ふふふっ……意地が悪いことをしてはいけないわ、左那?

455 名前: :2006/05/10(水) 22:01:44 ID:iGQYjvVy0
右那?何をしているの?
『てれびじょん』を消しているのよ、左那。五月蠅くて仕方がないわ。
男が目を白黒させているわ、右那。あんまり驚かしては可哀相よ……ふふっ。
私は静かなのが好きなのよ、左那。この男の都合は知らないわ。


456 名前: :2006/05/10(水) 22:02:33 ID:iGQYjvVy0
男が寝ているわ、左那。無防備ね。賊が入り込んで来たらどうするつもりなのかしらね?
刀が無い時代は不便ね、右那。……台所に刃物があったわ。握らせておいてあげたら?
寝返りでもしたら男が怪我をするじゃない。危ないわ、左那。
あら、本当。寝返りして自分を切りつけちゃったわ、右那?……これ位の傷、死にはしないわ。


457 名前: :2006/05/10(水) 22:03:20 ID:iGQYjvVy0
色々な本があるわ、左那。これは何の本かしら?…………あっ。
この男は力が弱そうね、右那?だけど、頭は回る性質…………あっ。
本棚が……倒れてちゃったわ、左那。男が下敷きよ。……まぁいいわ。
大丈夫かしら、右那?


458 名前: :2006/05/10(水) 22:04:06 ID:iGQYjvVy0
ねぇ、右那?私達のおかげで、この男の運気随分と揚がったわね?何度か怪我させてしまったけれど。
ええ。この男、二つも“空いていた”ものだから随分と損をしてきたみたい。感謝してるかしらね、左那?

459 名前: :2006/05/10(水) 22:04:50 ID:iGQYjvVy0
「……ええ……そう……最近……おかしな……まさか……本当ですか?……」
「……いますね……霊……二人……貴方……憑かれて……だから……」

男が話しているわ、右那。話し相手の女は嫌な感じがする……。
そうね、左那。嫌な感じ……。

460 名前: :2006/05/10(水) 22:05:37 ID:iGQYjvVy0
左那、見て……。この女、私達が見えているわ。
睨んでいるわね、右那。…………なのにこの男、何がなんだか分からないみたいな顔をして……ふふっ。
馬鹿面ねぇ……ふふふっ。あら……?嫌な女が、もっと嫌な物を取り出したわ。どうするの、左那?
この男から剥がされたら堪らないわ、右那。厄介だけど……女を殺すわ。
そうね……。女は殺した方がいいわね、左那。


461 名前: :2006/05/10(水) 22:06:21 ID:iGQYjvVy0
嫌ね、私ったら……ふふ……ねぇ、右那?
ふふふ……左那はまだいいじゃない。私なんか両腕切り飛ばされてしまったわ……ふふふっ。
……この男が……間に入らなかったら、消されていたかもしれないわね、右那?
……そうね、左那。


462 名前:前拾 :2006/05/10(水) 22:07:08 ID:iGQYjvVy0
「大丈夫ですよ!霊は二人とも苦しんでますから!このまま消してしまいましょう!」

「…………え?」

「?どうかしましたか?…………さあ!抵抗は止めて!さっさと消え…………!……ぇ、何ですか?」

「……やめてください」

「……は?」

「やめてください……やっぱり除霊しなくていいです。やめてください」

「え、あの……。え?」

「除霊、やめてください」


463 名前:拾壱 :2006/05/10(水) 22:08:00 ID:iGQYjvVy0
男が心配そうな顔をしているわね……、右那。……あら……私達が見えているみたい……ふふ……。
相変わらず情けない顔の男ね、左那?……ふふふっ……。ねぇ、あなた……?
あ……男が近寄っただけで怪我が消えるのね、右那。やっぱり、大したもんじゃないの……。
本当ね、左那……。……あなた、私達を剥がしたかったんじゃないの?

…………


464 名前:拾弐 :2006/05/10(水) 22:08:46 ID:iGQYjvVy0
右那、男が大学へ行くわ。送らないの?
え?もう行ってしまうの?私も送るわ、左那……。
行ってらっしゃい……。
気をつけてね……。

男は難しい顔をしていたわ、右那。何か気に障ったかしら……。手は振らない方が良かったかしら……。
照れているのよ。可愛いじゃない。照れ隠しなのよ、左那。


465 名前:拾参 :2006/05/10(水) 22:09:29 ID:iGQYjvVy0
「痛いのとか、苦しいの、嫌なんですよ」
「憑かれていて……ははは、痛い思いもしましたけど」
「苦しんでますから、って言われたとき、なんか……嫌だったんで……止めました」
「生活に支障無さそうですし、憑いていても、いいですよ……?」

変な男よね、右那?
そうね。変な男よね、左那?……でも少し…………。
少し……なぁに、右那?
少し……ふふふっ…………。
ふふっ、そう……。私も……。

466 名前:拾肆(左那) :2006/05/10(水) 22:10:13 ID:iGQYjvVy0
ねぇ?疲れているんじゃない?……うん、そう。大分疲れてるわ。休んだ方が……ね?
あら……何処行くの?寝室?必要ないわ、私が膝枕してあげるから。
……さ、どうぞ?
そぅ、そぅ。んっ、もっとこっち向いて?ほら、お互い顔がよく見える。
耳掻き、してあげようか?随分してないんでしょ?遠慮しないで、ってば……。
気持ちい?ん?気持ちい?ね?ふふっ……あっ……おっきーの取れたわよ?

あ……もう終わり?元気になった?そう……?
何かあったら、左那にいつでもお申し付けくださいね……なぁんて……。


467 名前:拾伍(右那) :2006/05/10(水) 22:10:59 ID:iGQYjvVy0
まだ……寝ないの?『れぽぉと』?を書くの……???『れぽぉと』ってなにかしら……。
あんまり無理したら……うん、早く寝なさいね?おやすみ……。

失礼します……。
……あ。起きてたの……?御心配なく。私も寝るところだから。
あら、同衾は嫌いなの?……でも、断るわ。
……暖かい、ね……ふふふっ……。
え?私が冷たい?……あぁ、死んだ身が恨めしいわね……。
それじゃ、名残惜しいけど……。用事は、遠慮なく右那に、ね?


468 名前:拾陸(左那) :2006/05/10(水) 22:11:46 ID:iGQYjvVy0
良い湯加減かしらね……。ん、どうしたの?そんなに驚いて……。
だって私、幽霊だもの。壁を抜ける位。
さ、頭を洗ってあげる。おいで。
……はいはい、その慎ましい姿勢、私も見習うべき所が多々あります。
さ、頭をこっちに……。


469 名前:拾漆(右那) :2006/05/10(水) 22:12:30 ID:iGQYjvVy0
頭は洗い終わった?長いわよ……っとに。
さっ、次は身体を洗ってあげるわ。
そっちに立ってて……。ん、どうしたの?座ってたら洗えない。意地悪しないで?
背中が広いね……。え?なぁに、大変だなんて。
洗いながらでも話はできるから……。さぁ、おいで。


470 名前:拾捌(左那) :2006/05/10(水) 22:13:19 ID:iGQYjvVy0
さ、口を開けて。私が食べさせてあげるから。
あ〜〜〜ん。
どうして逃げるの?……ふふっ、恥ずかしいんでしょ?分かってる……ふふ……。
さ、……また逃げる。早く食べないと口移しにするわよ。あぁ、それがいいわね……。んっ……。ほら口開けて……。
……ちょっと。なんで早食いするのよ。


471 名前:拾玖(右那) :2006/05/10(水) 22:14:04 ID:iGQYjvVy0
口元汚れてるわよ……。拭いてあげる。あら……。
顔を逸らさないように。
ほぉら……子供じゃないだから……ふふふっ……。しょうがないわね……。
え?あぁ、気にしないでいいわ。私の手拭位、何枚汚れても構わないから。ね?
ほらぁ、また汚してる……ふふふっ……。

472 名前: :2006/05/10(水) 22:14:50 ID:iGQYjvVy0
あなた……後悔してない……?
私達を憑かせ続けたこと……。

そぅ……良かった。

こんな美人を、それも二人、侍らせてるんだもの……ふふっ。
当然の回答ね……ふふふっ……。

あなたが死ぬまではずっと一緒……。ね?
でも、あなたが死んだ後は……また二人ぼっち、かしら……。

もうちょっとだけ……時間があるから……。ね?
あなたがいなくなるときのことは……考えない……。