突撃となりのツンデ霊 featuring ツンデ霊ハンター

219 名前:突撃となりのツンデ霊1 :2006/04/29(土) 11:17:41 ID:XxYGmMkF0
「お前はいつ成仏するんだよ!!」
「そんなのあたしの勝手でしょ!!」
いつものように始まる口喧嘩。
このアパートに越してきて以来、これが日常になってしまっている。
不幸なことに、俺の借りた部屋には若い女の幽霊が憑いていたのだ。
真夜中になると決まって、女のすすり泣きが聞こえてきやがるから、
「うるせぇ!泣くなら屋上にでも行って泣きやがれ!」
と一喝したところ、しばらく静かになったと思ったら、
「―――泣いてなんかないわよっ!!」
という罵声と共に、彼女が現われたというわけだ。
それからこっち、昼でも夜でもおかまいなしに部屋を浮遊しては、
何かにつけて俺に喧嘩をふっかけてくるようになっちまった。
全く、本当にやかましい事この上ない。
………可愛らしい顔立ちや、薄手のワンピースから時折のぞく
白い素肌や、たまに見せる極上の笑顔なんかを除けば。

220 名前:突撃となりのツンデ霊2 :2006/04/29(土) 11:18:44 ID:XxYGmMkF0
「大体お前本当に幽霊の自覚あんのかよ!?
 今何時だと思ってやがる!」
「日曜日の午後1時だけど!?あんたこそ年頃の男のくせに、
 今何時だと思ってんのよ!」
「なんだそれ、年頃の男はどうだっていうんだよ!」
「年頃の男だったら、こんな時間に家に引き篭もってないっ!」
「どうせ俺には親友も彼女もいねえよ!巨大なお世話だ!!」
「あら、あたしに言われてようやく外出かしら?」
「タバコ買ってくるんだよ!!」
そう言い捨てて、乱暴にドアを開けようとした瞬間、
ドアのほうが勝手に開いた。
「あれ?自動ドアだっけ?」
開いたドアの向こうには、見覚えの無い男がひとり立っていた。
男は俺に少し驚いたようだったが、すぐに丁寧に会釈をすると、
名刺のようなものを差し出してきた。
「急にお尋ねして申し訳ありません。私はこういう者です」
「………ツンデ霊ハンター?」
「はい、ツンデ霊ハンターです。
 ―――貴方の部屋、霊が出ますね?」
いきなり核心を突いてくる男。
喉まで出かかった何故それを、という言葉を寸前で飲み込む。
こいつ、何か怪しい。
ツンデ霊ハンターなんて職業は聞いたことも無いし、
初対面の人間に霊が出ますね、なんて言うのは大抵霊能者を装った詐欺だ。
………俺の部屋にうるさい霊がいるのは本当のことだがな。

221 名前:突撃となりのツンデ霊3 :2006/04/29(土) 11:19:35 ID:XxYGmMkF0
「何のことです?」
俺は知らぬふりを決め込むことにした。こんな詐欺に引っ掛かってたまるか。
「またまた。私のカンと、この虚数素子測定装置はごまかせませんよ。
 この測定装置は私独自のカスタムを施した特別製です―――
 ほら、こんなに高いツンデレ・パー・ミニッツが観測されている」
「なんです、そのつんでれって」
「話せば長くなります。
 とにかく、貴方の部屋にツンデ霊がいることは疑いようも無い事実。
 ―――気づいていないとは、実にもったいないですね」
なんだかよく分からない装置を片手に、なんかムカつくことを言う男。
「私が、貴方の部屋に棲むツンデ霊を無償で駆除して差し上げましょう」
「へええ、俺の部屋に霊が?霊を駆除って、いったいどうするんです」
「ですからね、このオーブントースターを改造した幽霊捕獲装置でこう、
 ズバッと」
「OK分かった、ズバッと帰ってくれ」
オーブントースターに車輪がついたようなガラクタを取り出し始めた男を、
ドアの向こうに押し出す俺。間違いなく詐欺かバカの類である。
「ああ!ちょっと待ってください!これは怪しいものでは―――」
「そのガラクタもお前自身も怪しさ大爆発だっつうの!!」
「………なにやってるのよ?」
玄関先で押し合いへし合いしている俺たちの騒ぎを聞きつけてか、
こっちのバカ女もそばにやって来た。ええい、前も後ろもうっとおしい。
その瞬間、男の眼がギラリ、と輝いたかと思うと―――

222 名前:突撃となりのツンデ霊4 :2006/04/29(土) 11:20:20 ID:XxYGmMkF0
「ツンデ霊キタ―――(゚∀゚)―――!!」
「うおぉっ!?」
俺の身体は、軽々と部屋の中に弾き飛ばされた。
「なっ、何だってんだ!!」
慌てて身を起こす。
部屋の真ん中で女幽霊と男が、にらみ合っている―――
「ふふふふ、ほら居るじゃないですか、見事なツンデ霊が!!」
「なっ、なんなのよぅコイツ………」
この男―――ホントに視えるのか!?
「ツンデ霊ハンターとして!
 このチャンスを逃す手はありませんッ!!」
男が手にしているのは、さっきのトースターのガラクタだ。
まさか、アレが本当に幽霊捕獲装置だっていうのかよ!?
「喰らえ!!」
裂帛の気合とともに放たれるオーブントースター!
トースターは床を流れるように滑り、硬直している女幽霊の足元に急停止する。
トースターのてっぺんがカパッと開いた瞬間、そこからまばゆい光が発生した!
「えっ!?あっ、やだ、吸い込まれる―――!」
「ふはははは!ツンデ霊ゲト―――(゚∀゚)――wwwwっうぇw!1」
女幽霊が、みるみるうちにトースターに引き寄せられていく。
このままでは、女幽霊は完全にトースターの中に吸い込まれてしまうだろう。
「こ、こんなの嫌―――!助けて―――………!」
その一言で。
俺の中で、ゴングが鳴り響いた。
「ジェノッサァァーイッ!!」
「ゲフッ!?」
全身のバネを使って中空に飛び上がり、トースターにカカト落しを叩き込む!
続いて男にネリチャギをぶちかまし、倒れたところにマウントを決めるッ!!
「よくもアイツを!骨が砕けようが貴様を潰す!!」
「うは、ツンキタ――(゚∀゚)――ってか男のツンはいらねええええ!!」
意味不明な言葉を喚く男の顔面めがけて、全力で拳を落とす。
形容しがたい轟音が、何度も何度もアパートを揺るがし続けた。

223 名前:突撃となりのツンデ霊5 :2006/04/29(土) 11:23:15 ID:XxYGmMkF0
「―――手。血が出てる」
「あ?………ああ、こんくらい大したことねえよ」
「………ごめん、ね。助けてくれたんだよね」
「!? バッ、そんなんじゃ」
「でも、あのとき、よくもアイツをって」
「う、き、聞き間違いじゃねえのか―――」
「ごめんね、あたし幽霊だから手当てもしてあげられなくて、
 おまけに悪口ばっかり言ってたし………
 あう、ごめん、屋上にも出られないしぃ………」
「おいおいおい、泣くなよ!俺全然気にしてねえし!
 その、何だ、お前はここにいてくれるだけで充分―――」
「え?」
「あ」

なんだか和やかな雰囲気になりつつあるアパートの一室。
その玄関の外で、ボロボロになった男がひとり倒れている。
その男の右腕だけがすぅっ、と上がり、親指を力強く立てた。
「で………デレ、キタ―――(゚∀゚)―――………!! 」

END