く〜るな幽霊
- 53 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 02:58:21 ID:qXHZba3q0
「でも、どうやって驚かせようかな…」
あたしは内心心底悩んでいた。
相手は超強者だ、普通にゆうれいが居てもまったく驚かない。
どころか、笑い飛ばすだけの胆力がある。 これは普通の驚かし方ではどうも成らない。
何か変わった方法でも考えないとダメなのかなぁ…
悩む…すっごいなやんだ。
けど、やっぱりなかなか答えは出なかった。 結局辿り着いた結論は……
「王道だよね。 けど、王道って言ってもアレだよ。
効果があるから王道って言うんだよね」
ポルターガイスト。
うん、アレしかない。
あたしも生きていた頃は結構悩まされた、アレ。
それを、この青年Aにやってみようかと思う。
「よぉし…思い立ったが吉日!」
早速あたしは、今まで薄らいでた体を一気に気密化してあの男の前に立ちふさがることにした。
ま、コレが所謂。『急に目の前に女性が〜〜』って奴なんだけど、アイツには通じそうもないんだよね。
幽霊さんには慣れてるみたいだし。
- 54 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 02:59:01 ID:qXHZba3q0
- 「ん……?」
「ひっひっひ〜、う〜ら〜め〜し〜……ひきゃ!?」
姿を現し、あの男の前に立ちふさがる。
うん、たった。
けど、あの男の姿が、前とは違った。
なんて言うか、素っ裸だった。
「風呂あがりぃ!?」
そう、たぶんアイツは風呂上がりだ。
バスタオルで頭を吹いている、しかも一人暮らし故かすっぽんぽん。
「へ、へんたいっ!」
なんて言えばいいのかもよく分からず、とりあえずあたしは叫んだ。
そぉかそぉか…あんなのがついてるんだ。 初めて見た、オトナバージョン。
けど、女の子にあんなのを見せるなんて変態だよ変態!
「こ、この恨み晴らさずおくべききゃ!」
言うなりなんなり、とりあえず姿を消す。
あ、あんな姿の男の前で冷静にポルターガイストなんて起こせるもんか!
「なんだ、あの幽霊は。 ホント、俺の知ってる今までの霊とは違うな。
裸、しかも相手の裸を恥ずかしがる幽霊なんて初耳だぞ…」
う、うるさいやい!
意表をつかれただけなんだから!
でなきゃ、幽霊のあたしがアンタなんかに驚かされるもんか!
とりあえず、心の中で叫んで消える。
そだよ、く〜る になる必要があるんだから。
- 55 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 03:00:10 ID:qXHZba3q0
- 夜、草木も眠る深夜二時。 レッツ丑三つ時。
よし、未だ、今がチャンスだ。
「うふふ、うふふふ……」
ちょっと含み笑いをしつつ……っていっても、今は姿を消してるから
そんな見えるもんじゃないけど、ま、気分の問題。
あたしは、姿を消したままアイツの部屋にある妙な女の子のお人形さん手に取った。
…っと、そこの君! 幽霊なのになんで『手に取れるか』って突っ込み入れたよね!?
フン、バカにするなぁ〜! 確かに普段普通にしてる幽霊には物とか取れないけど
ちょっと意識を集中すれば、そんなに重いモノでもない限り動かすことが出来るんだぞ!
君の部屋だって、たまに何も動かしてないのに音がしたりとか、急に棚から物が堕ちたりとかあるでしょ?
そういうのも幽霊さんの仕業なんだぞ!
え? それにしては姿が見えないって?
ん〜、みんながみんな、あたしみたいにく〜るって言う訳でもないし
恥ずかしがり屋さんなのかな?
あと、ちょっと話がずれちゃったよ。
とにかく、この男に対する報復をしなければ。
大作戦其の一:音で起こして寝不足大作戦。
内容:寝てるところを大きな音で安眠妨害。 起こす。
そうと決まればレッツ大作戦。
- 56 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 03:01:06 ID:qXHZba3q0
- 「よいしょっと…」
音を大きく出すには、やっぱり何かを割ったりするのが丁度イイ。
いや、最初流石にそれもやり過ぎかなぁっておもったんだけど
さっきの裸を見られた時のアイツの反応を考えてみるに、あいつは多分女の子慣れしてる。
だってさ、普通女の子に裸見られたら焦るよね?
けど、アイツは平然としてた。 多分、何人も女の子を泣かせてきたに違いない。
そんな女の子に変わって正義の鉄槌だ。 やり過ぎなんて事は全くないはず。
よし、音の大きく出しそうな物…んと………
見回すと、アイツの頭の上に大きな硝子製のお皿があった…
「よし、あれだ……」
アレを落として割って大きな音→起きる→怖くて寝れない→寝不足。
よし、完璧な公式だ。
「ふにゅ…以外に重い…」
なんでお皿、しかも硝子製のお皿って見た目に反して重いんだよね、何でだろう?
重いからかなぁ……ついぞ……
つるり
落として。
がしゃーん!
割っちゃった。 ま、いい、かな? えと、大きな音もたったし
アイツもコレで…
と、アイツの顔を見てみる…起きてない、いや、それどころか
……どうやらあたしは大変なことをしてしまったようだ。
アイツの顔面に、重い重い硝子製のお皿を落としてしまった。
- 57 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 03:01:59 ID:qXHZba3q0
- 「うわわ、ど、どうしよう!」
あ、あんな重いお皿がおちちゃったんだ。 一回の人間が無事な訳がない。
ほら、は、鼻血も出てるし。 それでいて目を覚まさないし。
コレはある意味危険な状態?
そ、そだ、ま、まずは救急車!
慌ててアイツの携帯電話を手に、110番に電話…
「って違うよ! 救急は119番!」
改めてかけ直そうとして
……ダメだ、無理だ。
こんな機械を通してなんて、あたし、幽霊の声なんて通じない。
どうすれば…コイツ、目を覚まして起きてくれるんだろう。
とりあえず濡れ布巾でも用意して顔につけて冷やしてあげよう。
ちょっとは有効なのかも知れない。
早速濡れ布巾を用意して、アイツの顔面に乗せてあげた。
端から見ると、あたしが昔箱に入ってた時の状況に近い…
「―――ってだめじゃん! ホントに死んじゃうよ!」
濡れ布巾を顔面に乗せて息も出来なくなったら、呪ったり驚かす事なんて全然出来ないよ!
慌てて額のみに乗せた。
あとはどうしよう。
そだ、目を覚ましてもコイツが元気じゃなきゃ、驚かしても意味無いよね?
元気を付けるには、美味しくて消化に良いモノを…そだ、お粥でも用意しておこう。
「お粥…お粥…水を多めに御飯をたけばいいんだっけ?」
炊飯器の中にテキトウにお米をぶち込んで、水をじゃーっと入れた。
スイッチオン。
ん〜、便利な物があるんだねぇ、これでお粥もすぐ出来るよ。
あとは……そだ。
見守ってでもあげるか、容態が危なくなったりしたらすぐに対応出来るように。
アイツの別途の横にイスでも用意して…さて、暫く見守ってあげるか。
う…見守るって言うのも変だけど、あとで驚かす為だもんね。
- 58 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/21(金) 03:03:07 ID:qXHZba3q0
- 「ぅ……」
ちょっとうとうとしてたのかな…
多分寝ちゃってた、目を覚ましたら……
アイツの顔がすぐ目に飛び込んできた。 どうやら無事だったみたいだ。
「お前、何俺の横で寝むってんだ? にしても…頭痛ぇ…」
どうやら、昨晩あったことは覚えてないみたいだ。
とすると…
「なんだ、お前俺の横でぐっすり寝て、幽霊のクセにそんな趣味でもあるのか?」
……
そか、コイツ覚えてないって事は…あたしが必死だったことも知らないのか。
当たり前か。 自分の顔面にお皿が直撃したクセに。
「あ…そういえば、このお粥」
気付くと、昨日一生懸命作ったお粥がからになってた。
「幽霊のクセに御飯食べるのか? 水加減はイマイチだったけど…な」
ヘヘ、っと微笑するアイツ。
「べ、べつにアンタの為に造ったワケじゃないんだからっ!
全部、あとであたしがアンタを呪ったり脅かしたりする為に作ったんだからね!」
慌てて、思ってもいない言葉を発してあたしは姿を消した。
……こんなはずじゃないのに。
「ああ! ちょっと待てよ! お前か、この皿割ったのは! これ高いんだぞ―――!」
…………ん〜、少しは驚かすことに成功した……のかな?
ところでどうしよう。
何回いい方法無いかなぁ、結構離れしてるようなコイツを驚かす方法。
そこの君、何かいい方法あったら教えてくれない?
取って置きの、どんな幽霊慣れしてる人間でも驚くような方法!