ツンデ霊ハンター

876 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/16(日) 00:42:30 ID:3PLA2vqr0
俺はツンデ霊ハンター。
人は俺のことを無職と呼ぶ。だが後悔はしていない。後悔はしていないよ?
ツンデ霊を捜し求め、全国を巡る毎日は充実している。
これは俺が決めた生き方だからだ。

事故が多そうな峠を攻め、ノーブレーキでガードレールに突っ込み、華麗
なるジャックナイフを披露して病院直行など日常茶飯事。
小学校のトイレに侵入することなどはすでに日課だ。不審人物を発見した
PTAよ、安心してほしいそれは多分俺だ。だから通報はカンベンしてくれ。
マスクの女性を見つけたら必ず声をかける。その後のシミュレーションは
完璧だ。だが想定通りに事が運んだことはなく、たいがい通報される。
飯は当然エビフライだ。もう匂いを嗅いだだけでお腹いっぱいなほど食って
きたが、いまだ『はやく食べなさいよ!』を聞いたことはない。
某ゲームではレイトウマグロを使用。だがこれは何から何まで間違っている
気がしたし、だいいち勝てないのでヤメた。

今日は神社の探索をすることにした。
地元の人間も行事がなければ立ち入らない山奥だ。さぞいいカンジに寂れて
いるだろうと期待していたのだが…
小綺麗だ。
ヤバい雰囲気は感じない。あんなに苦労して山道登ってきたのに?

俺はためいきを吐き、賽銭箱のまえに腰掛けた。
正直、ちょっと疲れた。病院と留置所を往復し続けたせいか、体調が悪い。
畜生くされおまわりめてめえの理解できねえ生き様は犯罪だってか?あ?
なめんな公僕おおやけのしもべめいつもいつも――

「貴様、ここで何をしておる」
「――うるせえんだよ…っ?!」
いきなり背中を蹴られ、俺は階段を転がり落ちた。
「他人様の土地で大した態度だな小僧。良い死に方をせぬぞ」
「てめ、今死にそーになったじゃねーか!」

877 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/16(日) 00:45:36 ID:3PLA2vqr0
さっきまで俺が座ってた場所から、殺人未遂の犯人が見下ろしている。
赤い袴の巫女さんだ。
ちっちゃい巫女さんだ。
「え…今の、お嬢ちゃんが?」
妙に時代がかった言葉遣いだったが、メンヘラだろうか。
まあ夢見がちな時代は誰にでもあるしな。五年後赤面しやがれや。

「人を蹴っちゃいけないって、ママに教わりませんでしたかー?ねえ?」
俺は大人の余裕でお行儀の悪い子をたしなめた。
「はん、なるほどな…」
くそこのガキ、なんて目で人を見やがる。俺はゴミか?ゴミに見えるか?
胸糞悪い、何を一人で納得してやがる。

「――小僧、憑かれておるな」

何をわかりきったことを。
「ああ、頭のイカレたお嬢ちゃんのせいでな、疲労は倍増だ」
「(ピキッ)…そうではなく。霊に取り憑かれておる」
「あっそ」
「(ピキピキッ)このままでは貴様ただでは済まぬぞ」
「な ん だ っ て ―――――――――――っ!?!?!?」
「と、突然絶叫するでないわ阿呆!そんなに驚くようなことか」
「なな何が憑いてる!?金髪ツインテールはいるか?ツンツンしてるか?」

く、ツンデ霊ハンターの俺としたことがなんてこったとんだ大ミスだぜ!
そういや俺霊感ゼロだよツンデ霊見えるわけないじゃん!

878 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/16(日) 00:46:58 ID:3PLA2vqr0
「ついんて?よく判らぬがキツネを筆頭に一人百鬼夜行状態じゃな。
 これ程の瘴気はなかなか……」
「は、ハーレムキタ―――――(゚∀゚)―――――!! 」
「静まれ。落ち着け。騒ぐでない」
「キツネ!キツネ耳!キツネ尻尾!モフモフ!モフモフ!」
「こ、興奮するな。そやつらの怒りを鎮めねば…」
「ツン!俺ツンだいすき超ドM!むしろ萌え!」
「早急に御祓いを」
「やなこった」
「手遅れか…いや、生きておるうちはまだ望みがある…って待て!」
「やーなこったー」

その日から、俺とツンデ霊との甘い生活が始まった。
姿が見えず、会話が一方通行なのが難点だが幸せに暮らしている。

もうひとつ。
あの巫女は、何故か俺の御祓いがしたくてたまらないらしく、ほんとうに
どこまでも追ってくる。そのうち訴えようかと思っている。
まあ、あれがあいつの生き方なんだろう。理解不能だが。

俺はツンデ霊ハンター。
最近身体の調子がやたらと悪い。だが後悔はしていない。
これは俺が望んだ生き方だからだ。