私とファイトなさい15
- 784 名前:@ :2006/04/12(水) 17:10:13 ID:zgkaOQC3O
- 今日は佳多奈の命日だ。
義妹の佳多奈が交通事故で死んでもう一年になる。
俺は実家の北海道に向かった。
久しぶりの故郷を散策しながら佳多奈の墓へと歩く。
佳多奈は変わった子だった。幼い頃から事故や人死をしばしば予見した彼女は周囲から気味悪がられていて話をする相手は俺ぐらいだった。
いつも口数少なめに俺の傍について回る佳多奈の姿がまるで昨日の事のように脳裏に甦る。
「いくら予知能力があっても自分の事故くらい予見できなきゃ…ダメじゃん…」
墓前で何とは無しに呟く。
「大事に想う人の未来しか…予見出来ないの」
俺の数メートル後ろ、そこに佳多奈が立っていた。
生前と同じく無愛想な顔で。
恐怖より懐かしさが先立った。
「佳多奈…久しぶり」
「久しぶりね、兄さん」
「成仏は…出来なかったのか?」
気になっていた質問をしてみる。
- 785 名前:A :2006/04/12(水) 17:12:08 ID:zgkaOQC3O
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「…やり残した事が、あったから」
佳多奈はゆっくりと俺に近づいてくる。
「ごめんなさい兄さん、ホントはイケない事って分かってるけど…
もう、止められないの」
佳多奈はやんわりと俺の胸にしがみつくと言った。
「兄さん、私と…
私と ファイトしなさい」
カーン、と何処からかゴングの音が鳴り響くと佳多奈は両拳をガッチーンと打ち付けて俺に組みかかってきた。
流れるような小内刈りから背負い投げの連携で俺を地面に叩きつける。
「脇が甘いわ、兄さん。引き手もしっかり切らないと」
するすると俺に馬乗りになる佳多奈。
「拳は強く強く握り込むの。でないと骨を痛めちゃうから」
「ちょ、佳多…」
佳多奈は俺の制止を傲然と無視しビキビキと筋を浮かべた拳を振りかぶる。
「ジェノッサァァーイッ!!」
何度も何度も何度も顔面に鉄拳が叩き込まれた。
―
入院した俺がテレビを見ていると国内線の飛行機が墜落した、と報道されていた。
それは俺が帰りに乗るはずだった飛行機だった。