おかえり!

416 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/02(日) 02:24:37 ID:mgI1GCXwO
「ネェ、ミエテルンデショ?」

そう言われ首に回った手に力が入るのを感じ、意識が遠退いていく・・・

最悪の朝を迎える俺。いつもこんな感じだ。 酔っ払ってこの世の人では無い女に声をかけてしまってからの日常生活。 見えるだけで、お祓い等できない俺は、こうゆう類には関わらないように生きて来たつもりだった。 あぁ、酒の力って恐ろしい・・・
が、不思議な物で人間は慣れる生き物らしい。 今では、首締め、金縛り、ラップ現象にポルターガイスト、なんとも感じなくなっていた。致命傷な事が起きないからなのか・・・
まぁ、慣れるまで地獄の生活ではあったが・・・

417 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/02(日) 02:26:39 ID:mgI1GCXwO
 それが、最近変化が起きた。  
『ミャア』

「みゃあ?」 俺は嫌な予感がした。 人間、慣れる事は出来ても急激な変化に耐える事は難しい。 しかし、その時の俺はどういう訳かキレてしまった! 今思えば、耐えられない事への防御本能だったと思う。

また、あの時のように怯えて暮らせと?

寝不足な毎日を遅れと?

地獄の生活を再現しろと?

俺は初めて、女の幽霊に怒鳴ってしまった。

「おらぁ! お前なぁ!」

ビクッと肩を震わせ、キョトンとした目で俺を見る女。 俺はかまわず続ける。

「こっち来い! 正座せぇ!!」


419 名前:本当にあった怖い名無し :2006/04/02(日) 02:34:33 ID:mgI1GCXwO
「さて、どうゆう事なのか説明してもらおうか?」

仁王立ちの俺の前には、チョコンと正座かました女が一人。
膝の上では真ん丸な瞳で俺を見上げる獣が『ミャア』

「お前は幽霊のクセに、子猫拾ってきてんじゃねーよ!
しかもソレってしっかり死んでるじゃねーか?」

「べっ、別に、か、可愛いから、拾ってきたんじゃないからね! ッテに・・・そう!勝手に付いてきちゃっただけなんだから!!」

「それに、食費だってかからないんだから!!」
『ミャア!!』

おー、最後は逆ギレですか? しかも気が付けば2対1ですか?
んー・・・と正論相手に考え中の俺に対してポツリと
「あなただって、私を拾ってくれたじゃない・・・
死んでから一人で街を彷徨ってた私に声をかけてくれたじゃない・・・
なのに、何しても全然相手してくれないし、寂しかったんだから!!」

そう言われると返す言葉がない。
確かに、俺も恐怖ゆえ、彼女の存在を無視してきた訳だし。
って、勝手に付いてきたんじゃなかったか?
しばらくの沈黙の後に、ハァとため息をつく俺。

「わかったよ、ちゃんと面倒を見る事と、成仏する時には、そのチビも連れていく事! 解ったな?」 と言って振り返ると、獣とじゃれあう女の姿がそこにある。
あー、幽霊って便利ですね、そうゆう時だけ消音モードですか? ハメラレタ感があるものの、不思議と悪い気はしなかった。
まっ、それからは帰って来る度に「おかえり!」ってのと『ミャア!』が追加された位で今のところ、地獄の生活は免れている。