跡取り4
- 82 名前:跡取り 2−1 :2006/03/15(水) 22:23:00 ID:aed+XYfm0
- 戦後も間もないというのに、東亜権の確立という名目の元世は不穏な
空気に包まれていた。
だけど、屋敷の中は隔世の感が流れ独自の時を刻む。
僕には従者がついていた。俗にいうメイドだ。
親はそれぞれに忙しい。僕に構ってなど居られないという事だろう。
姉さんに気付く者はいなかった。
「坊ちゃん。お食事の用意ができました」
「うん。ありがとう」
姉さんとの語学の授業中だったが、彼女には姉さんは当然見えない。
姉さんの、刺すような目線も。
「いきましょう」
「はい」
テーブルマナーに関しても概ねこなせるようになっていた。
姉さんも特に指摘するでもなく、ただ一挙手を見守っているだけだった。
「ごちそうさま」
「・・・おいしかった?」
「うん。とても」
- 83 名前:跡取り 2−2 :2006/03/15(水) 22:23:39 ID:aed+XYfm0
- 食事、部屋に居るときは一人になるよう申し付けていたので、
独り言としか取れないようなこの会話も、訝しがられることはなかった。
「さぁ、部屋に戻って食休みした後勉強を再開するわよ」
「はい」
姉さんはやはり、二人になりたがった。
僕が素直に従うと、心なしか嬉しそうな顔をした。
〜〜♪〜〜・・・♪
姉さんがハミングを漏らす。機嫌がいいのだろう。
いつものあの曲だった。僕が得意とするダンスの曲だった。
「また、踊ってもらえますか?」
階段を登る途中、僕は姉さんに尋ねた。
姉さんはつ・・と振り返り
「・・・そうね。鈍っていないか確かめましょう」
口調は厳しいが、目元を彩る笑みが雄弁に何かを物語っていた。
そしてまた先を行きつつ、あのハミングを奏でる。
「ダンスは好きよ。貴方はもうすぐ舞踏会に出られる歳ね」
僕の背は姉さんを超えようとしていた。姉さんはあのときのままだったから