番外編:我輩と猫
- 478 名前:たまねぎツンデレ ◆vSaTtgGg0. :2006/02/21(火) 19:19:46 ID:YEg3qlJf0
- 「うわっはっはっはっは、我輩はノーライフキング・バンパイアである。下々のものよ、ひざまづけぃ!!」
我輩の声が静寂に飲まれていく。名乗りの練習は我輩の日課なのである。
「番外編:我輩と猫」
「はぁ。なぜ、この街の人間どもは我輩を恐れんのだ?」夜の廃工場で我輩は一人ごちる。
「この前のへんな男おんなも、その前のダンディな口ひげのおじ様もぜんぜん、こわがらんかった」
「あ…い、いや、口ひげのおじんじゃ、おじん」我輩、なぜ、言い直すのだろう?
「故郷では、ノスフェラトゥとか、カーミラの再来とか呼ばれて恐れられていたのに…」
戦利品のフリフリの服をきれいに畳みながら懐かしいあの日々を思い出そうとしていた。
…こつん…
「だ、誰じゃ!!…あ」我輩は思わず服を後ろに投げてしまった。あ、あとで拾いになんか行かんぞ、本当だぞ。
「出てこんと、消すぞ!!」我輩、ちょっと不機嫌。
「みゃぁ…」子猫がのそのそとでてきた。
「な、なんじゃ、子猫か」「みゃぁ」返事をするようなタイミングでなく。か、可愛…いや、なんでもない。
「まったく、おどかしおって」放り投げた服を探しに行く。…みつからん…。…悲しくなんかないわ!
「みゃぁ」「お」子猫が服を引っ張ってきてくれた。あ、よだれがついとる。…いや、これくらい多めに見るわ。
我輩はなんといってもノーライフ・キングじゃからな。懐は深いのじゃ。
「みゃぁ」子猫は腹をすかせているのかすりすりと足に体を擦り付ける。か、可愛…い、いやいやいや。
我輩は子猫を足で払った。
「甘えるな、下賎の者が」「み…みぃ」とぼとぼと向こうに去っていく。我輩は…我輩は…。
「勝手にどこにいく」子猫の道をふさいだ。「みゃぁ」子猫が嬉しそうな声を上げた。
「か、かわいそうで引き止めておるわけではないぞ。ふん。あれだ。服を見つけてくれたお礼をしていない」
「腹が減っておるんじゃの、ちょっとまっておれ」しかし、こまった。我輩は生者が食べるようなものはまったくない。
「…お、そうじゃ」我輩、名案。「ちょっと待っておれ」翼を広げて夜空にとんだ。
- 480 名前:たまねぎツンデレ ◆vSaTtgGg0. :2006/02/21(火) 19:22:41 ID:YEg3qlJf0
- 「まったく、なんで我輩がこんな格好をせねばならんのだ。あの、男おんなめ」
我輩はミルクを片手に、新たな衣装を着て空をとんでおった。
今度の衣装はまっしろでフワフワした猫っぽい衣装だ。
ちゃんと耳までついておる。
あの男おんなは「いつでも、おいで」なーんていっておった。
誰がいくか…いや行ってあげてもいいかのお。
嬉しいわけではないぞ。配下のものは主君をもてなすのが当たり前じゃ。
…なんじゃ、我輩はにやけておらん。にやけておらんぞ。
もどると子猫はへばっておった。
早速ミルクを器に注ぐ。しかし、子猫は一口なめて、なぜかのまん。
生意気な。口にあわぬのか?
「…みぃ…」「そ、そんな声でなくな!!」
「…」「ん…どうした、しゃべらんか…おい、おい…みぃ!!」
我輩、お気に入りの衣装をさっと脱ぎ捨て、みぃを小脇に抱える。
あ、みぃはこいつの名じゃ。呼び名がないと不便じゃからとりあえずじゃ。
もはや、一刻の猶予もならん。我輩はもっとも頼りになる忠臣「ヒゲダンディ」のもとへ飛んだ。
- 481 名前:たまねぎツンデレ ◆vSaTtgGg0. :2006/02/21(火) 19:25:35 ID:YEg3qlJf0
- 「まったく。世話を焼かせおって」
「みゃぁうん」
我輩は胸元で鳴くみぃの頭を小突いてやった。
どうやら、ミルクが冷たすぎたらしい。それで飲みたがらなかったというわけだ。
「気絶するのと腹を下すこと、どっちがつらいのかのぅ?」
「みぃ?」さあ…とでも言っておるのかな?
しかし、ヒゲダンディは役に立つのぉ。
あれは本当に忠臣じゃ。我輩にまた、バラを一輪くれおった。
あやつ、連れ合いはおらんのかの…そのわりには身なりはこざっぱりしとるしのぉ。
…
あ、別に気になってはおらんぞ。それに、よく思い出せばあやつ、前回、我輩を「甥っ子」に似ているといっておった。
我輩はおんなじゃーーーーーーーーーーーー!!
さて、それからなんじゃが…みぃは我輩にすっかりなついてしまった。
しかも、なんかの、我輩のお気に入りの服で眠るようになってしまった。
我輩はどちらも可愛いからどうにもできず、頭をなやませてるのじゃ。
あ、い、今のは内緒じゃぞ、内緒なんじゃからーーー!!