僕と薫
- 350 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/20(月) 10:40:08 ID:u0IPvT0E0
- 「>>321…おもしろいわね」僕が2chでツンデスレを読んでると声がした。
薫だ。彼女は僕の背後霊をしている。
「私のことも書いてよ」実はもう、書き込んでいた。
薫を文字って香で書き込んだが、それがちょっと不評を買ってしまった。反省と照れくささで見せられない。
「そのうち書き込むよ。っていうか、これ、ツンデ霊だよ? 自覚あったの?」
「…!? ば、ばっかね、何いってんの。そんな訳ないでしょ。つんつんでれでれなんて意味わかんないんだから」しっかりわかってる。
自己分析が出来ているのか、キャラ作りでそうしているのか。
まぁ日常から接している僕はよくわかるのだが、薫の場合は前者だ。
2ch用語を知っていたのが恥ずかしかったんだろう。そっぽを向いている。
「…ふん、お休みの日も自宅でそんなの読んでて、不健全なのよ」薫も楽しそうによんでたじゃんか…。
「外行くわよ、外」「あ、ああぁ、まだ全部読んでないのにぃいい」僕は薫に引きずられるようにして家を後にした。
「どこ行くの?」「行き先は男が決めるものなの!!」おいおい。
「あて、なかったの?」「…ぐむっ」ぴ〜ひょろろ、とトンビが鳴いている。間が長い。
「じゃ、あっち行こうか」とりあえず、歩き出した。
さて、ここで僕の悩みを打ち明けよう。僕には恋人がいる。でも、その子は背後霊なんだ。
見える人は見えるんだけど、見えない人には見えない。そうなると、まともなデートなどいけやしない。
彼女が出来たら金がかかる…なんて人いるけど、僕の場合は恋人がいない時と生活は変わらなかった。
僕も一般の人みたいな恋愛したいな…それが僕の悩みだ。
- 351 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/20(月) 10:43:39 ID:u0IPvT0E0
- 「どこ行くの?」今度は薫が僕に聞いてきた。
「いいからいいから」と僕は先を急ぐ。上演時間まで後15分だ。間に合うか?
僕がほぼ満員の映画館に飛び込んだのはそれから20分後。まだ、予告編を上映しているところだった。
「映画かぁ…それでなによ。いっちょ前に恋愛映画でいいムードでもつくろうっての? やぁらしい」
その声がちょっと弾んでる。映画につれてきたのが嬉しいんだろう。
生前の彼女は入院が多く、あまり、これなかったらしいから。
「で、タイトルは何?」「しっ、始まるよ」
僕は薫をひざの上に乗っけた。いくら幽霊でも、他人のうえには座らせられないだろう。
薫ははじめ、わくわくしていたからか、ゆらゆらと僕の体をゆらしていた。後ろの人、めいわくだったろうな。
ストーリーが進むにつれ、それは次第に小刻みになっていき、僕は震度3の地震にあってるかのような感覚に襲われた。
ぎゅっと僕の手を握り締められた。映画のタイトルは「サイレン」ゲームが原作で前からみたかったのだ。
そして佳境に入ったとき…
…
じわーっ…
…と僕の膝に生暖かい感覚が広がっていく。
…
…やられた。
映画がおわったあと、僕はさっさとコートを着て、抱きついて離れない薫を抱えて映画館を飛び出した。
「…あれは、誰もいないシートを濡らすから怪談になるんだよ。僕をぬらしてもなぁ…?」僕は薫に言った。
「ひぐっひぐっ…だって、だって、ぅ、うぐぅ…」薫は僕の胸に顔をうずめて泣き止まない。
コートの下の僕の膝はびしょびしょだった。
「…怖かったの?」「…」答えない代わりに、こくりとうなずく。
いつも勝気でいけいけな薫がこんなに怯えるなんて。ちょっとかわいそうなことしたかなぁ。
僕は夕暮れのベンチで薫が泣き止むまで、抱きしめた。
- 352 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/20(月) 10:45:10 ID:u0IPvT0E0
- 終わりです。
家に帰ってきた後、『僕』は一週間くらい薫に口をきいてもらえなかったそうです。