返せ!!

656 名前:『返せ!!』1 :2005/12/31(土) 21:40:23 ID:CborgzLMO
ちょうど1年前くらいかな?
俺が大学入って初めての年越しコンパ(?)で酔い潰れちゃったのよ。
フラフラしながら『一人で帰れるわ〜』って言ったのは覚えてんだけど、それ以降の記憶は無し。寒さで目を覚ますと近所の公園。公園の時計に目をやると夜中の1時40分…俺のアパートが目の前に見える。
もう西暦は一個変わってて、どっかのアホがまだ鐘を突いてる。そん時気付いた。


財布が無い…というかカバンが無い。




657 名前:『返せ!!』2 :2005/12/31(土) 21:41:58 ID:CborgzLMO
ショルダーバックに財布から学生証やら一式入れておいたんだけど、寝てる間に完全にやられた。
「マジかよ…」
生まれて初めてこんなにガックリ来てたかもしれない。そんなとき背中がゾクッとした。霊感なんてもん無かったんだけど、俺が居るベンチの後ろってブロック堀越しに墓場なんだってことに今さら気付いた。
(…だからアパート安かったんだよなぁ)
とかアホなこと考えながら、その後ろにある気配を確認しようとしたんだけど、体が動かない。
金縛りってヤツ…目だけは動くんだけど他ん所は全然動かねぇ…恥ずかしいけど体はガクガク震えてて、半分開いた口からは唾が垂れてたと思う。
その気配が背中からシュルッと首筋に絡み付いてから正面へと移動してきた。
黒白く光りながら(変な表現だけどそんな感じ…)俺の前に立っている。
背中くらいまである長い髪で顔が見えないが右腕の肘から先が無い…女の幽霊。




…‥女は全然動かない。もちろん俺の体も。

658 名前:『返せ!』3 :2005/12/31(土) 21:43:36 ID:CborgzLMO
実際には五分も経って無いだろうけど、俺にはとてつもなく長い時間に感じた。女は全く動く気配が無い。俺は腹に力を入れてなんとか動こうとするも動けない…声を出そうとするが…

「…っ」

喉の奥で声が止まる。冷や汗が止まらない。息だけが白く口からのぼっていく




…ふいに女が動いた。
無いと思っていた右の肘先は後ろに回していたようだ。
そして、その右手には…俺のカバン!!!!とっさに俺は

「か…返せ!!!!!!!!」

実際はそんな大きな声は出せてなかったとは思うが‥そう叫んだ!そしたら



「べ…別にあんたのためにしたんじゃないんだからね!」



バシッと俺にカバンを叩き付けて女は消えた。


659 名前:『返せ!』 その後 :2005/12/31(土) 21:47:24 ID:CborgzLMO


「たまたま…!!そう!!たまたま…」

「うん、驚かせた相手がケンジのカバンを持ってたんだから!」

「だから私は別にケンジのためだとかそんな…って私誰に言ってんの?!たまたまケンジが公園で寝てるのを見掛けて、たまたまカバンを持って行った連中を見掛けて…たまたま…こう…驚かせたくなるような顔付きだった…‥から…」

「その…うん!そうなのよ!…って私ケンジって呼び捨てしてるし!…あ、当たり前よ!あたしの方が三歳年上なんだから…だから…あの…ケンジ‥君が…悪い!」


女はお墓の横に座りこんで、そんなことを呟いていた。俺がクスッと笑うと、気付いた女は顔からボンッと白い湯気を残して消えた。



それからやたらと物が無くなるようになり、俺はそのたびその女に無くなった物を叩き付けられるようになった。
その話はまたいつか…