足いるか?

736 名前:@ :2006/06/03(土) 00:32:53 ID:hXFtMaUy0
「足いるか?」
薄暗い学校の帰り道。そんな声が僕に向かって不気味に響いた。
「いりませんよ。こんな足」
僕の返答は自嘲気味に響く。
「・・お、お前、その足は?」
「この足ですか?これはね、先月、車に轢かれそうだった子供を助けてこうなったんですよ」
「・・・」
「僕は正しいことをしたはずなんです。でもね、僕はどうしても後悔してしまうんですよ。
これで、僕は唯一の取り柄だったサッカーを、もう二度とできなくなってしまったんですから。
この足を見るとね、どうしてあの時ほうっておかなかったんだろうって、そう思ってしまうんですよ。
最低ですよね。その子は泣きながら僕に『ありがとう』って何度も言っていたのに・・
だから、僕に後悔をさせるこんな足、無い方がいいんですよ」
声の主は無言だったので、僕は「聞いてくれてありがとう」とだけ言って車椅子を家へと向かわせた。

737 名前:A :2006/06/03(土) 00:33:30 ID:hXFtMaUy0
次の日、僕は帰り道、同じところで誰かに突き飛ばされた。
がしゃーーーーん!!と大きな音を立てて車椅子が飛ばされていく。
「っ〜〜〜!!」
突然、僕の足をものすごい激痛が襲った。
僕は、パニックに襲われた。とにかくこの場から逃げようと、飛ばされた車椅子のほうへと歩いた。
そう、歩いたのだ。自分の足で!
呆然とする僕の前に一人の幽霊がいた。それは先日の声でこういった。
「べ、べつにあんたに同情したわけじゃないんだからね!た、たまたま、そう!たまたま、とりたて
新鮮な足があっただけなんだから!!か、勘違いしないでよね!!」
そういって、どこかに消えてしまった。
僕に付け替えられた足は、僕の体にぴったりの長さだった。

 それから、三年後のサッカーワールドカップ。
僕は、決勝戦でハットトリックを決め、一躍スター選手の仲間入りをした。
それ以来、多くのファンに支えられ今もトップ選手として活躍している。
だが、この幸せな日々には、どうしても影が付きまとう。
僕は、考えずにはいられないのだ。
この足の元々の持ち主は誰だったのだろう。今、どうしているのだろう、と。
 今の僕の幸せな日々は、誰かの不幸によって成り立っている。