私の名前は

659 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/26(金) 02:21:46 ID:bpUAjYJS0
推敲は大事ですよねー
推敲をしない文章というのは味見をしない料理と同じで、
作者の「読ませてやる」的感情の表れと取られる恐れがあるんですよねー
推敲がどれだけ大事か、ちょっと以下の文章を例にとって考察してみましょうねー


「ごめんなさい」
見慣れた光景が目の前にあった。
もう何度目になるだろう。こうも続くと失恋も大したことはないと思える。嘘だ。

「あーあ、やっぱりダメだったね♪」
小憎たらしい声が聞こえたかと思うと、空から逆さまの女が降ってきた。
「アンタみたいなのが女の子と付き合おうってのが、そもそもの間違いなのよ、うん」

一人で結論を出して一人で納得している。小憎たらしいどころではない。憎い。
「これは多分お前のせいなんだぞ」
こいつが現れてからまったくロクなことがない。
階段から転げ落ちるわ、財布は落とすわ、テストで赤点は取るわ、女の子にはフラれるわ。
……決して俺の注意力や努力や男前度が足りないわけではない。

「なんでよー、アンタがフラれるのと私となんの関係があるのよ」
「お前、なんか変なオーラとか出してるんじゃないのか?
 取り憑いた男から女を遠ざけるオーラとか」
「じゃあ、アンタ今まで彼女とかいたことあるの?」
「生まれてこの方、一度も汚れを知らない身体です」

やれやれ、といった感じで女は肩をすくめて見せる。お前どこのアメリカンだ。
「とにかく、お前もうどっか逝けよ。いつまで俺に憑いてるつもりだよ」
「やだよーん。せっかくこんなに面白い奴見つけたのに、それを捨てるなんてとんでもない!」
……また人のゲーム勝手にやりやがって。

(省略されました・・一部の地域を除いてレスを延長します)

670 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:50:19 ID:aBE7++Cc0
>>660
ネタもないのに書いた(´・ω・)ス
反省はしてない(´・ω・)ス
謝罪と賠償をする(´・ω・)ス


こいつのことは生きてるうちから知っていた。
いや、知っているといっても同じマンションの同じ階の住人というだけで、
話したこともなければ名前すら知らないのだが。
ただ、時々朝の登校の時間帯が重なることがあり、
そのときに顔を見たことがある程度だ。

ある朝、俺がいつものように遅刻しそうになっていると、
玄関を出た廊下の手摺に女が腰掛けていた。
頭がおかしい人かと思ったらこいつだった。

「危ないぞ」
下は植え込みと芝生がある。とはいえ落ちたら怪我ではすまないだろう。
特に深く考えたわけでもなく、気がついたら声をかけていた。
そのときのこいつの驚きようは今でも覚えている。
人のことを化け物でも見たような顔で見ていたな。失礼な幽霊だ。

それからこいつは俺の周りをうろつくようになった。

「それにしてもアンタもよく飽きないわね」
「なにがだ」
「普通はさ、これだけフラれたら、ちょっとは謙虚になるものよ」
なぜ謙虚にならなければならないのか。
よくわからないが、それはつまり俺の男前度が足りないとか、
俺がいまいちイケメンになりきれていないからとか、容姿に欠陥があるからといいたいのか。
「アンタのことなんて誰も気に留めてないのに」
……本当に失礼な幽霊だ。

671 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:51:05 ID:aBE7++Cc0
こいつに出会って半年が過ぎただろうか。
最近のこいつは元気がない。
相変わらず憎まれ口だけはきくが、以前のような切れがない。
もしや、いわゆる女の子のなんとやらか。……なわけないか。

「なあ」
「なによ」
「なんか悩みでもあるのか?」
「……幽霊なのに?」
「幽霊でも悩みぐらいはあるだろ」
「…………」
「ないなら別にいい」

いよいよおかしい。
ここ二、三日のこいつは、いつもの憎まれ口もきかなくなった。
これでは本物の幽霊のようではないか。まさか今さら自分が何者なのか自覚したのか。
一日中どこかに行っていたかと思えば、気がつくと俺の部屋の窓際で物思いに耽っている。
ふむ、こうして静かにしてればそこそこ可愛いのにもったいない。
そういえば、なぜ俺がこいつのことを覚えていたのかといえば、
朝見かけるこいつの可愛さがちょっと気になってたんだよな……。

「ねぇ」

アホなことを考えていると突然話しかけられた。
久しぶりなので少し動揺する。

「アンタ、自分が死んだ後のことって考えたことある?」
「はぁ?」

なんなんだいきなり。
まさか最近元気がなかったのは、そんなことを考えていたからか?

672 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:52:08 ID:aBE7++Cc0
「例えば、自分が死んだあと、誰もそのことを哀しんでくれなかったらとか考えたことない?」
「そんなことありえないな。俺が死んだら、学校中の女の子が悲しみのあまり寝込んでしまって、
 翌日から学校は当分休校になるだろう」
「真面目に答えて」

真面目に答えてるぞ、と言いかけてやめた。
こいつのこんな真剣な顔を見るのは初めてだ。

「そんなこと考えたことないな」
「本当に? 自分がいなくなっても誰もなにも思わなくて、いつもと変わらないでいるのよ?
 それでもいいの?」
もしかして、最近一人でどっか行ってたのは、それを確認しに行ってたのか?
それで悩んでいたのか?

「……そりゃあまったく悲しんでくれないってのも寂しいけどさ。
 でも、変わらない生活を続けてくれているなら、俺は嬉しいよ」
「…………」
「だって、これからも生きていくんだぜ? いつまでも後ろばっかり見て生きていくのが幸せとは思えない

よ」
「……そう」
それっきり黙りこんでしまった。もしかして外したのか。
確かに自分でもクサいことを言ったとは思うが、ってお前が言わせたんじゃないか。
俺の責任じゃないぞ、うん。

673 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:52:54 ID:aBE7++Cc0
一ヶ月が過ぎた。
その日もどこかへ出かけていたアイツが帰ってきたとき、俺はある変化に気がついた。

「お前、なんか薄くなってないか?」
「はぁ?」
突然なにをバカなことを言うのかといった風に怪訝そうな顔をする。
そして慌てて自分の身体を確認している。

「……別に変わらないと思うけど」
「いや、やっぱり薄くなってるって。前はそんなに透けてなかった」
俺の記憶が確かなら、初めて話したときのこいつはほとんど普通の人間と変わらなかった。
それが今は背後の景色が透けて見えている。どうにか服だけ透けて見えるようにならないだろうか。

「もしかして……」
なにかを思案するように呟くと、そのまま窓から出て行ってしまった。
どうしたんだよ。気になるじゃないか。こっちがもしかしてだよ。

結局帰ってきたのは深夜になってからだった。
「あのさ、前言ってたこと覚えてるか?」
アイツは黙ったまま窓の外を見ている。
「自分が死んだあとに悲しんでくれる人がどうこうってやつ。
 俺思うんだけど、やっぱり自分の親しい人とか大切な人がいなくなると悲しいよ。
 でも、その悲しみを周りに見せないようにして、我慢して、なんとかやっていくしかないんじゃないかな


アイツは相変わらず窓の外を見たまま動かない。ちゃんと聞いてるんだろうな。
「その人がどれだけ悲しんでるかなんて、周りから見ただけじゃわからないし、
 その人がその悲しみを乗り越えていければ、それが一番いいことなんじゃないか?」
俺の恥ずかしいセリフをアイツは黙って聞いていた。

674 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:53:58 ID:aBE7++Cc0
「ごめんなさい」
見慣れた光景が目の前にあった。
もう数えるのはやめた。なんど経験してもつらいものはつらい。

「いい加減諦めたら?」
なんともいえない表情を浮かべてアイツが見下ろしている。同情するなら愛をくれ。
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
「始める前から投了って感じだけど」
やっぱりムカつく。

「ああ、どこかに俺の魅力に気付く、美人で巨乳で性格のいい子はいないのか」
「そんなのがいたら、天然記念物としてすぐに保護されるでしょうね」
こいつは最近以前の調子を取り戻した感がある。なにかあったのか?
俺の方は相変わらずだ。
階段から転げ落ちるわ、財布は落とすわ、テストで赤点は取るわ、女の子にはフラれるわ。
恐らくこいつが俺からなにか吸い取っているのだと思う。
……決して俺が成長していないわけではない。

一つ違うことがあるとすれば、アイツの姿が俺にはもうほとんど見えなくなってしまっていることだった。

アイツ自身には自分の変化がわからないらしい。
これは俺の問題なのか、それとも……。
あまり考えたくない。

675 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:55:00 ID:aBE7++Cc0
それでも時は流れ、季節は巡る。
アイツはいつもの調子で話しかけてくる。
「最近告白しないね。ようやく諦めたの?」
突然空中から声がして、その度に驚かされる。
「なによ、変な顔して」
本当にわかってないのか、こいつは。なぜかイライラする。
段々アイツと話をする時間も減ってきている。

「ねぇ、なにか悩みでもあるの?」
「なんだよいきなり」
「最近元気ないじゃない。なにかあったの?」
「……別に」
「ないなら別にいいけど」

ふと、以前にもこんなやりとりがあったような気がした。
あれはいつだったか……。

「アンタに聞いておいてほしいことがあるんだけど」
「……え? なに?」
なんだいきなり。こいつらしくない。

「私、もうすぐここからいなくなるかもしれない」

なんだよそれ、衝撃の告白のつもりか。いつものおふざけにしてはタチが悪いぞ。

「アンタ言ってたよね。私の姿が薄くなってきてるって。
 多分……もうそんなに時間がないんだと思う」
「いなくなるって、それでどこに行くつもりなんだ?」
「うーん、どこっていうか、この場合元に戻るって言った方が正しいのかな?」
「ふざけんなよ! 今さら……今さら元になんて戻るわけないだろ!」
なんでそんなにあっさりしてるんだよ。結局俺と一緒にいた時間なんてそんな程度だったのか。

676 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:56:00 ID:aBE7++Cc0
「……もしかして私のために泣いてくれてるの?」
「えっ?」
そのとき初めて自分が涙を流していることに気付いた。
「もういいよ、どこへでも好きなところへ行けよ」
半ばヤケクソ気味になって声を絞り出す。
「ありがとう、それだけでもう十分よ」
最後にアイツの柔らかい手のひらが頬に触れた気がした。


それから半年が過ぎた。
あの廊下でアイツと出会ってから一年以上が過ぎていた。
俺は高校を卒業して大学生になっていた。

新しい環境の中で新しい友人と出会い新しい生活が始まった。
相変わらず階段から転げ落ちたり、財布を落としたり、単位を落としそうになったり。
……やっぱり俺のせいだったのか。考えたくはなかったが。
とにかく俺は以前と変わりない生活を送っていた。

ある日、高校時代の友人に会う機会があった。
気の合う者で集まって、プチ同窓会とでもいうようなものを開くことになったのだ。
会は順調に進み、参加者はみな楽しんでいたようだ。
もちろん俺も楽しんでいた……はずだ。
帰り際、参加者の一人が俺にこんなことを言った。

「君、大学に入ってずいぶん変わったね」
「そうか?」
「うん、なんか落ち着いたっていうか、大人びてきたっていうか……ただ」
「ただ?」
「どこか悲しそう」
なんとなく触れられたくない部分に触れられた気がして、俺は逃げるようにその場を後にした。

677 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:57:00 ID:aBE7++Cc0
春が来て、俺はギリギリ進級できていた。
大学生活は相変わらずだったが、以前のように階段から云々はなくなった。
俺も変われば変わるものだ。

春といえば新入生の季節、俺の所属するサークルでも新人獲得に躍起になっていた。
しかし、俺はといえば気合十分で勧誘に出かけた先輩たちを尻目に、
通り沿いに設置されたテーブルで受付係として日向ぼっこを楽しんでいた。
そもそも古墳研究会などというマイナーを通り越して絶滅危惧種に指定されそうなサークルに、
わざわざ入会してやろうなどという物好きなどいるはずもないのだ。
とはいえ、これ以上メンバーが減ってしまっては、サークルとしての存続も危うい。
そんな物好きが現れることを祈りつつ、俺は眠りについた。

「……っ! ……せんっ!」
うるさい。人の安眠を邪魔する奴は馬に蹴られてしまえ。ん? 違ったか?
とにかく、そんな物好きが現れたようだ。
「んあ! ああ、はいはい、入会希望の方ですか〜。
 それじゃ、こちらの用紙に名前と学年と学部学科と連絡先と……」
やれやれといった感じの溜息が聞こえる。
「相変わらずね〜アンタも」

全身の筋肉が硬直してしまったかのように身体が動かない。
「……ま、元気でやってるようで安心したわ」
「なんで……」
ようやく出た言葉はそれだった。
「なにそれ。久しぶりに会ったのに最初に言うセリフがそれ?」
「え? え? ちょっと待てよ、お前あのとき死んだはずじゃ……生き返ったのか?」
「勝手に殺さないでよ。第一、最初っから私は死んでなんかないわよ」

アイツの説明によると、あの廊下から落下した後、一時意識不明の状態になっていたらしい。
そのときには、アイツはすでに幽霊になっていて、
廊下をウロウロしていたら俺に話しかけられたということらしかった。
つまり、あのとき見ていたアイツは幽霊ではなく生霊とよぶべき存在だったようだ。

678 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:58:00 ID:aBE7++Cc0
春の日差しの中、二人で並んで椅子に腰掛けながら思い出話に花を咲かせる。

「でも、段々私の身体の方が回復してきて、アンタが私の姿が見えなくなり始めたのはこの辺りね」
アイツはよく喋った。会えなかった時間を取り戻そうとするかのように。
「本当は私、もう戻るつもりなんてなかったの。
 私が死んだって誰も哀しむ人なんていないって思ってたから」
「それであんなことを聞いてきたのか」
実際、あのときのアイツになにがあってそんな気持ちにさせたのかはわからない。
多分聞いても教えてはくれないだろう。でも今はそれで構わない。

「アンタ、あのとき色々言ってくれたけど、それでもまだ帰る気にはなれなかった。
 私も色々あったからね」
俺はアイツの告白を黙って聞いていた。
「でも、あれだけ一緒にいて、情が移ったのかな。最後のアンタの涙にやられちゃったな」
……それは忘れてくれ。
「ゴメンね、ほんとはもっと早く会いに来るつもりだったんだけど、
 リハビリとか休学中の学校の勉強とかで時間が取れなくて今までかかっちゃった」

アイツの話を聞きながら、俺は顔を伏せて耐えていた。これはヤバイ。
アイツも知ってか知らずか、黙って肩を並べている。
俺はただ感謝していた。神様がホントにいるのなら、そのほっぺたにキスしてやりたいぐらいだ。
もう一度やり直そう。あの時間を。そして新しく始めよう。今ならそれができる。

679 名前:本当にあった怖い名無し :2006/05/27(土) 16:59:20 ID:aBE7++Cc0
「なあ、お前――」
「待って」
俺の言葉を遮ってテーブルに置かれた入会希望の用紙にペンを走らせる。
「私、ずっと気になってたことがあるのよね。アンタ私の名前知らないんでしょう?」
用紙を書き終え俺の前に差し出す。
「これからはお前じゃなくてちゃんと名前で呼んでよね」
マイッタ。目の前が滲んでなにも見えない。

アイツはニヤリと笑って言った。
「私の名前は――」


はい、例文は以上です
長いですねー、くどいですねー
こうした文章を推敲もせずにそのままにしておくと、

(省略されました・・このレスの結果は午前二時からのドキドキ丑三つドキ♥の中でお送りします)