Kiss Me Good-bye

192 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:29:31 ID:PEbVhoxcO
あれはとても暑い…本当に暑い夏のある夜だった…

僕は一人暮らしを始めたばかり。借りたアパートは狭くてボロイし友達もいない土地…正直僕は実家に帰りたかった…
しかし当然ながらそんな理由で帰る訳にもいかず、バイトを決め、覚悟を決め、なんとかこうにかやっていた。そして暮らしはじめて一週間が過ぎようとしていたある夜…
僕は風呂から上がり洗面所で歯をみがいていた。
…不気味だ
…引っ越してきた初日から思っていた。おそらく上から下まで斜めにはいっているヒビがそう思わせるのだろう…

193 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:30:24 ID:PEbVhoxcO
僕は霊的な事には凄く弱いのでその洗面所に立つときはいつも霊が出るんではないか、とドキドキしていた。
そしてその日…出やがった…。鏡にうつったのだ…がなにかおかしい…。
普通は自分の後ろにうつるものだと思うのだがソイツは自分の前にいる…しかも満面の笑みでピースサイン付き…
僕は恐怖と言うよりも唖然とした。そして少し視線を落とすとソイツは鏡ごしでなくとも普通に見えていた。幽霊って実体化してるモンなのか…!?

194 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:31:11 ID:PEbVhoxcO
そう思いつつ僕はいつまでも笑いながらピースサインしているソイツの頭をハタいた(霊的なモノは苦手なはずなのに…我ながらすごい度胸だ)
「…おい」  バシッ!!
ソイツは頭を押さえながら後ろに立ってる僕を見上げ
「イタッ!!…イタイわね!!何すんのよ!!」「…てゆーかワタシが見えてるの…?」
「見えてるどころかフツーに触れれるレベルだね」
僕がそう言うとソイツは黙り込み一分くらい沈黙が流れ、なんとその後いきなり泣きだしてしまった…。
「オ、オイ、どーした?」
「ウルサイわね!!目にゴミが入っただけよっ!!」  …あきらかにゴミが入って出る涙の量ではない…

195 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:35:47 ID:PEbVhoxcO
「初対面だからってそんなウソつくなよ、ちょーど俺引っ越してきたばかりで友達いないんだ。少し話そうよ」
ソイツはコクリと頷き、口を開いた
「ワタシ…二年くらいこの部屋にいるんだけど誰もワタシに気付いてくれなくって…話なんてしたことなくって…淋しくって…」(淋しくての所が物凄い小声だったのを覚えてる) 
間髪いれず「だ、だからアナタが声をかけてくれたのが少し嬉しくて…でっ、でも涙が出たのはホントにゴミが入っただけなんだからっ!!」  なんか可愛いヤツだな…。
そう思いつつその日は二、三時間話しをした。

196 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:36:44 ID:PEbVhoxcO
    ―次の日の夜―
バイトから帰ってくるとソイツは普通に部屋の中に座っていた
「おかえりっ!!」
「…た、ただいま」(あまりにソイツが馴染んでるので戸惑いを隠せなかった…)
「あら、顔がシケてる上に元気なただいまも言えないのね?」
「…顔が可愛いくなかったら塩かけてるぞ」  と言うと急に頬を赤らめ下を向いた
「どうした?」 と聞くとソイツは少しだけ顔を上げ
「ホントに可愛いって思っ……や、やっぱなんでもない!!」  本当に可愛いヤツだ。

次の日、また次の日、一週間、一ヵ月…日に日に僕達は仲良くなっていった…。しかし彼女はこの世の住人ではない。当然終わりはやってくる…それも突然に…

197 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:37:34 ID:PEbVhoxcO
彼女と会って二ヵ月が過ぎようとしていたある夜の事だ。彼女は具合が悪そうだった。そして彼女は呼吸もろくに出来てないような声で
「…ワタシがいなくなってもちゃんとやんのよ?」 彼女はもう自分がこの世にいれない事を知っていた…
「い、いなくなる!?なんでだよ!?冗談だろ!?」 見事にパニクっていた…
「ウフフ…冗談じゃないよ?ワタシはもう天国に行くのよ…アナタの世話はもう疲れたしねっ♪」
「フザケんな!!フザケ…んなよ」 もう涙で前が見えなかった
「泣かないで?少しの時間だけだったけどワタシは楽しかった…。だから最後も笑顔で消えたいの…アナタも笑顔で見送って?…ね?」
「クッ…ホントに最後なのか?」

198 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/25(土) 07:42:30 ID:PEbVhoxcO
「ホントよ…だから最後に一つだけお願いがあるんだけど…。」
「…なんだよ?なんでも聞いてやるよ…」
「ゴメン、お願いじゃなかったわ、むしろアナタのお願いを聞いてあげる感じね」
「???」 意味がわからなかった
「アナタ、ワタシにキッ、キスしたいでしょ?最後にさっ、させてあげてもいいわよ?」    本当に最後までコイツは…
「…あぁ、よくわかったな?ずっと前からしたくてたまんなかったよ…」
「………ドキドキする…」  彼女はそう言って目を閉じた。そしてそれが最後の言葉だった…。僕がそっと唇を重ねようと顔に手をやると、すでに実体は無かった…。かろうじて薄く彼女が見えているだけ…。
そしてその今にも消えそうな彼女にキスをした瞬間に彼女この世から消えた…。

さよなら…引っ越してきたばかりの僕に出来た最初の友達…いや、名前も知らない最愛の人よ…。