低テンションな幽霊さん

107 名前:低テンションな幽霊さん   1/1 :2006/03/19(日) 04:44:37 ID:prjErsvJ0
 …目が覚める。 職も金もメシを作る気力もない、いつもの朝。
「とりあえず、カップ麺かなんかですま―――――」
 ぶすっとむくれている少女の姿が、目に止まる。 …あれ、俺、もしかしてあの子誘拐した?
 いや、ないない。 だってあの子足ないし。 どう見ても幽霊ですよキバヤシさん?

「こんにちは、僕はトムです。 あなたの名前を教えてください」
 …中学生の英訳のような日本語で、意思の疎通が図れるかテストだ。
「名前を教えるメリット、ない。 …料理作るから、台所借りる」
「……え? それこそ君にメリットなくね?」
「キミの生活水準、ひどい。 …このままじゃ、キミを苦しめられない」
 あれ、この幽霊はもしかしてサドですか? …大歓迎だぜ。
「こ、このわたくしめを汚い豚と罵って下さい名前も知らない幽霊様!!」
 ぎろり、と睨まれる。 ただそれだけで、身動きひとつ取れなくなった。 …金縛り初体験。 めくるめく調教の日々? ヒャッホウ大歓迎だぜ俺は!

「………できた。 さっさと、来い」
 その言葉と同時に、金縛りが解除される。 …とりあえず、『食べ物』ができているのか見てみよう。
 最近カップ麺ぐらいしか食ってない俺は、このよくわからない臭いがなんなのか、わからない。
「―――――――なんて、コト」
 そこには、惨殺死体が数体、皿に盛り付けてあった。 …まずはトマト。 砥いでいない包丁のせいか、見事に力が入ってぐちゃぐちゃだ。
 次にご飯。 水を吸いすぎた彼らは、今まさに茶碗の底にどろりと沈みそうである。
 ……最後に、みそ汁。 その色は名状しがたく、外宇宙からのナニカを象徴しているかのようでもあった。
 どれも賞味期限ギリギリだしな。 ええい、俺は食う、英雄になるっ!!

「………あ、れ?」
 意外と、いける。 つーかうめぇぞこのみそ汁、見てるだけで正気度ガリガリ減りそうだけど。
「……おいしい?」
「…ま、悪くはない、かな」
「………思えば、キミに聞いても仕方ない」
 …ぶっきらぼうな台詞。 でも、嬉しそうに笑っていて。
 ――――――――だから、苦しめられるってのも、悪くないって思ってしまった。
「うぐぅぅぅぁぁあああ!!!」
 そのせいで、すっかり忘れてたんだ。 本当にマズイ料理は、後からダメージが来るってことを。