決意

819 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/07(火) 05:13:31 ID:4vnedwFR0
あれからどれくらいの時が流れたのだろう
見えるのは白い天井、聞こえるのは微かな機械のノイズ
変わらない日々、変えることのできない現実

「ああ、今日はいい天気。風が気持ちよさそう」

いつの間に現れたのだろうか
窓際から聞こえてきたのは女の声、視界の隅で揺れるカーテン

「……毎日毎日暇なやつだな」
「あなたの代わりに外の様子を見てあげてるんじゃない、感謝してよ」

女はひとしきり窓から見える風景を語り、いつの間にか消えている
今の私がどれだけ望んでも得られぬもの、失くしたものを女は持っている

あれからいくつの季節が巡ったのか

「あら、今日はいつものお爺ちゃんがいないわね。どうしたのかしら」
「なあ、頼みがあるんだ」

ある日生まれたひとつの決意
ここから抜け出す方法

「……やめた方がいいわ、きっと後悔する」
「今より後悔することなんて、どこにもないさ」
「……そう」

そして静寂が訪れる

目覚めた私は、そばに横たわる私自身に別れを告げて、ゆっくりと窓にかかったカーテンを開く――
そこにはただなにもない世界が広がっていた
そして私はすべてを失った