別れ

754 名前:本当にあった怖い名無し :2006/03/05(日) 04:14:39 ID:VUE/t5lx0
「この桜を一緒に見るのもこれで最後だね」

風に舞う花弁が彼女の身体をすり抜けて――

「……もしかして泣いてるの?」

楽しげな笑みを浮かべて僕の顔を覗き込む――

「メソメソおっとこらしくないな〜、最後ぐらい笑いなさいよ」

そう言って桜の木の下を踊るように歩くその頬に――

「約束! もう二度とわたしのために泣かないで!」

流れる雫を見た気がした――

「あなたはこれからまだ生きていくのよ」

振り向いた彼女はいつもの笑顔――

「わたしはもう側にいることはできないけれど」

可愛いと言えばいつもみたいに怒るのかな――

「大丈夫よ、あなたはわたしが愛した人だもの」


あれから五年が過ぎた
君を失ってからの僕には、この世界はとても色褪せて見えていた
でも、きっと大丈夫
君がくれた笑顔を、僕はまだ憶えているから