カップル

453 名前:85pesOZL0 ◆keaGkWNWxw :2006/02/21(火) 02:10:37 ID:Px2v7ftN0
―夕闇せまる公園わきの通学路。
アパートが立ち並ぶ都会の片隅を、足早に帰路につく青年がひとり。

―怒ったような足取りと、時折聞こえる悪態のような独り言。
その姿はまるで 最前まで仲良く帰宅していたのに、
些細な意地の張り合いで痴話げんかになってしまったカップルのそれを彷彿とさせた。
しかし彼の傍らにはそれらしき恋人の姿は見えない。

―唐突に、彼は足を止めた。

―それまでは人の目を気にして声を押し殺してけんかしていたものが、
まるで恋人から思いもよらない告白、または悪態を聞かされたかのように、
止まった時の中で目を丸くし、虚空を凝視している。
彼は目線の先へ思わず半歩踏み出し、下げた両手を少し広げて次の言葉を待っているように見える。

―やがて彼は言葉を失ったまま、あげかけた両手を力なく下ろした。
しばらくそのままの姿勢で数回うなずいていたが、意を決したように顔をあげると、再び帰路についた。
先ほどよりも心なしか意気消沈しているようにも見える。

―公園を通り過ぎ、明滅するおんぼろの街灯を二三歩越えたところで、
ふわりと左腕をあげた。…まるで誰かに引っ張られたかのようだった。

―気のないようなそぶりを見せながらまた2度ほどうなづいていたが、ふと、彼は口元をほころばせた。
少し左に向き直り、右手を自分の左側、頭よりも少し上の辺りへもっていくと、数回なでる動作をした。

―やがておろした左手で軽く握り拳を作ると、ゆっくりと歩をすすめた。―さっきより充ち足りて―誰かをいたわるように。

―壊れかけの街灯の照らす彼の先には、ぴったりと寄り添うような2人分の影が伸びていた。

―今宵は星空が綺麗だ。