黄泉がえり‐不二子

184 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/16(木) 16:22:53 ID:jTBZ5o5e0
「あっ、まってよ、そっちは暗くてあぶないよ!」僕は先を進む不二子に注意を促した。
「うるさい、のろま。びびってんの?だめ男は私の後をついてくればいいのよ」不二子は顔はいいのに性格は鬼だ。
「ねぇ、不二子ぉ、もうやめようよぉ」僕は情けない声を上げながらこれ以上進みたくない意思を伝えた。
「あんた、ほんっとにマンモーニね。どうしようもない愚図だわ」不二子は自分より身長の高い僕の胸倉をつかんで自分の顔に近づけた。
…めきゃっ☆
頭がくらくらした。頭突きを食らったのだ。
「そこでそうしてなさい。私が帰ってくるまでママのオッパイ代わりに指でもしゃぶってるのね」僕をおいて彼女はどんどん進んでいく。
僕はこのとき彼女を必死で止めるべきだった。そうすれば、今のこの状況もなかったろうに。
ずんずん進んでいく不二子。それが彼女をみた生前の最後の姿だった。
不二子は暗がりで足を踏み外し、そして脳溢血で死んだのだった。外見はとてもきれいだったのに。
それはちょうど一年前の出来事だった。

「あんたが、あの時必死こいて止めなかったのがいけないのよっ!!」不二子が言う。
「ご、ごめん。」僕は素直に謝った。「はっ、あんたのせいで私は死んだってのにお気楽なものね」うぐっ、言葉に詰まる。
一年後、つまり、今日。彼女の墓参りから戻ってきた僕を待っていたのは、僕の部屋で仁王立ちする不二子だった。心底たまげた。

お化けであることをのぞけば、彼女はそのままだった。他の人には見えないが僕には見ることも触れることもできる。
「なんで、成仏してなかったの?」僕が質問すると彼女はこう答えた。「あんたをからかうため、遊びにきたのよ」なんてことだ。
僕は眩暈がして部屋を出ようとする。すると不二子が着いてきた。
「ねぇ、ちょっとあっちいってくれない?」目的地までついてきた不二子に僕は頼む。
「なんで?」
「なんでって、ここどこか知ってる?」間髪いれず「トイレ」…あう。身もふたもない。…あわわ、やばい、もう限界だ。もらすわけにはいかない。
「みないでよ…」「あはっ、いっちょまえに」冷たい微笑み。
ジッパーをおろす。隣には不二子。緊張がたかまる。僕は…。

>続く

185 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/16(木) 16:26:52 ID:jTBZ5o5e0
「なんで、用を足さなかったの?」緊張して、そんなものどっかいってしまった。
「ふん、小心者ね。ちっちゃいから自信ないんでしょ?」そういう問題か?
「不二子、女の子なんだよ? もうちょっとデリカシーってもの、ないの?」この言葉がいけなかった。
「…生意気言うようになったわね」そういうなり彼女は僕の胸倉をつかんで自分の顔に近づけた。
あ…デジャヴュ…。僕は次に来る衝撃に備え、身構えた。
…ほわっとした感触が僕の唇に重ねられた。…え、キス? 
僕はそのまま押し倒された。不二子のホッペがほんのり赤く染まってる。不二子の手が僕の胸をまさぐる。
「体は男の子らしいのにね。ニブチンで、臆病で、そのくせ…すごく…かわいいのよね」「…あっ」僕も彼女に呼応するように息が荒くなる。
夜の帳が僕たちの影を覆いつくしていく…。

>続く


186 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/16(木) 16:35:57 ID:jTBZ5o5e0
「どうしてあんなことしたの?」シャツのボタンをつけながら僕は不二子に聞いた。

「あんた本当に馬鹿ぁ?自分で考えなさいよ。」彼女も初めてだったはずだ。行為の最中の不二子はいつもの強気とは打って変わったものだったから。
「ねぇ、教えて。不二子の口から聞きたい」僕は意を決して彼女に詰め寄って彼女の肩をつかんだ。不二子の顔がとても近い。不二子って本当にきれいなんだなぁ…。
「みゃ…っう☆」不二子が変な声を上げた。変なところ触ってないはずだけど…。どうやら触れられただけで反応しているようだ。
「や、だ、めぇ…」息が途切れ途切れ。ちょっとおもしろい。調子に乗ってあちこちつつく。
「あ、はぁ、はぁ…ん…」ひとしきり遊んだ後、僕は彼女を解放してあげた。
ほんのり上気したホッペがすごく…

「かわいいw」

僕は口に出してそういった。不二子ははっとして僕をみつめた。
「…本当に?」小さな声で僕に訊く。
「うん、とっても」そう口にした瞬間、彼女はぼろぼろと涙をこぼした。その姿がとても女の子らしい。

「ありがとう…。私、行くね」

彼女がこういった。僕ははっとした。不二子がほんのりと光に包まれていく。
「どこ行くんだよ、行かないでよ!!不二子!!」
「ふん、ほんっと、あんたはマンモーニ(ママっ子)ね」あ、もう、いつもの不二子だ。
「あんたが来るのをあの世で待ってるからw」そういい残して不二子は消えた。

僕は座り込んだ。不二子のぬくもりがまだ残っているベッドの上に。・・・そして泣いた。
明日が来る。不二子のいない明日。そんな明日に意味はあるのか。

…ないよな・・・。
僕はベランダに足をかける。一歩踏み出せばいい。

そして僕は夜空に身を捧げた。
…これでいいんだよね・・・

187 名前:帰ってきたツンデレ初心者‐revenge‐ :2006/02/16(木) 16:37:02 ID:jTBZ5o5e0

がっ!!

僕は体をつかまれ、ベランダに引き戻された。不二子が怖い顔で立っている。
「この馬鹿!!言い残したこと言いに来たらとんでもないことしてるんだから」そういって彼女は言葉を続ける。
「うんと長生きしておじいちゃんになってくるのよ。そうじゃないと許さないんだから。」…え…。
「私を忘れるのは許さない。だけど、私に縛られて、一生独り身なのもゆるさない。途中で死ぬの許さない。」
「ここで精一杯生きて、恋愛して、子供育てて、それからきなさい」仁王立ちになってそう言い放つ。
「奥さんと一緒に来ても、私が勝つ自信あるんだからね。それだけ、じゃ」最後に、とんでもないことをいってあっさり彼女は消えた。

僕はワンワン泣いた。朝が来るまで泣いた。そして、僕は彼女に誓う。不二子にあったとき笑われない強い男になることを。

‐END‐